インセンティブの話

 少し補足。
 インセンティブとは、動機付け、人間の意欲、人を動かし、方向付けるものということ。
 
 例えば、「まじめに努力すれば報われる」と認識されている社会があったとする。この社会では、人々では、報われるためにまじめに努力しようとするだろう。
 仮に、「一生懸命働くより、上司にゴマをすったり、権威あるものにおもねったほうが利益がある」と認識されている社会があったとする。そうすると、人々は自分の仕事をせずに、上司にゴマをすったり、権威あるものにおもねったりするだろう。
 あるいは、「努力してもしなくても、受ける報酬は変わらない」と認識されている社会があったのならば、人々は無気力になるだろう。
 もしくは、「努力するより、何もしない方が得をする」と認識されている社会があれば、人々は働いたら負けかなと思うだろう。

 旧社会主義国の経済が駄目になってしまったのは、大体これで説明される。

 「組織で仕事をして、組織の仕事の実績で個人が評価される」と認識されている社会があったとするならば、組織の構成員は成果を出すために協力して助け合って仕事に臨むかもしれない。
 「個人成績の悪い人から切られていく」と認識されている社会があったとするならば、その社会の構成員でかつ人事権を持っている人は、自分の身を守るために新規参入者にわざと無能な人を採用し、必要な教育訓練等も施そうとしないだろう。また、組織の構成員もお互いに助け合うこともないだろう。

 成果主義の多くが失敗したことは、多くはこれで説明される。
 『経済学的思考のセンス』によると、成果主義が成功するための条件として、

  1. 成果に関する評価制度の整備と評価過程の公平性
  2. 従業員の裁量権が増えること
  3. 従業員の能力開発の機会が十分に与えられること

 が必要であるらしい。
 そして、不十分な条件のまま導入すれば、モラルハザードを生みかねない。
 あと、評価の信頼性については、評価するものとされるものの組み合わせが定期的に変わるところでは、ある程度の評価の信頼性が担保できる、とも書いてあった。

 そんなことを考えながら、目下モラルハザード中。