まちづくりと景観

 美って何かよくわからない。

まちづくりと景観 (岩波新書)

まちづくりと景観 (岩波新書)

 かつて、「美」は一部権力者、芸術家だけのものだった。歌枕のような名所も、壮大な建築物や城下町のような都市の景観も、権力者だけが楽しむものだった。
 それが民主主義の世の中になり、市民がそれを市民自身のものとする……には、至っていない。
 経済優先・効率優先の考え方、景観を建物単体ではなく、周辺の環境と一体として考える視点が欠けていたことや、土地の所有者と生活者の意見の食い違い、市民に「まち」というものを意識していなかった認識の欠如など、理由は色々ある。
 それにしたって、景観ってなんじゃらほい。

美しい都市景観づくりのための一九原則

  • 自然の地形を尊重し、できるだけ生かしていく。
  • 特色ある自然の山・川・海・湖などを極力意識的に見せる。
  • 連続した時間の証明者である歴史的遺産を尊重し、現代に生かす。
  • 都市を拡散させないで、できるだけコンパクトにして、豊かな田園を保持する。
  • 都市の上空は市民総有の空間としてコントロールする。
  • 都市を一望で捉えられる眺望点を確保し、市民が都市の実感を持てるようにする。
  • 協働作品としての都市景観に、個性ある統一性を求める。
  • 統一を乱さない範囲の多様性を推奨し尊重する。
  • 道路は人間のためにあることを確認し、歩行者空間を拡大する。
  • 都市のシンボルをつくり、市民が一致できる共感点を育てる。
  • 都市に潤いとくつろぎを増やすため、緑と花と水場を増やす。
  • 「まち」に優れたアートやデザインされたストリート・ファニチュアを置く。
  • 地域の素材をできるだけ使い、地域の色彩を見つける。
  • 地域にそぐわない不良物を排除し、その侵入を防ぐ。
  • 人々が楽しく安心して動き、憩う場を作り、市民の交流を深める。
  • 都市を舞台にして、伝統の祭り、魅力的な新しいイベントを繰り広げる。
  • 日常生活の中で、市民の愛情ある手がいつも加えられていること。
  • ヒトやモノへの人々の優しい気持ちを育てる。
  • 子供のときから老人まで「まち」への関心を深める教育・学習を行う。

 どこのユートピアですか?
 まあ、こんなユートピアなら、欧米人が好む「自分が生まれ育った(住んでいる)小さな町」に誇りを持てるようになるんだろうな。
 まあ、この原則には勝手に追加していいらしいので、

  • 市民が、自分たちの「まち」を誇りに思える環境をつくる。

 って加えることを提案する。
 
「どちらのご出身ですか」
「ええと、佐賀っていって、九州の、福岡の近くの……ごにょごにょ」(小声)