「失われた十年」は乗り越えられたか
失われたものは取り戻せない。
「失われた十年」は乗り越えられたか―日本的経営の再検証 (中公新書)
- 作者: 下川浩一
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2006/04/01
- メディア: 新書
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もちろん、複数の条件があるんだろうけど、この本を読んだ内容を簡単にまとめてみよう。
失われた十年の前提条件
- バブル期の異常なまでの土地等の資産価値の暴騰と、それを背景(担保)とした銀行の貸し出し超過、企業の借り入れ超過。バブルが弾けた後は、それらは全て不良債権となる。
- いけいけどんどんで設備投資をしまくって、損益分岐点が高くなってしまった。
- 護送船団方式からの脱却と金融ビックバンへの対応がスムーズに行かなかったこと。
失われた十年が、なぜあんなに長引いたのか
- 安易なリストラ(一方的な首切り)による、企業の競争力の低下、人材不足。
- 安い人件費のみに着目した安易な海外移転による、国内産業の空洞化。異国・異文化に対する戦略の不十分。
- 長期的な戦略なしに、短期的な株主利益を重視するアメリカンスタンダードをグローバルスタンダードと履き違え、企業経営が迷走したこと。
- 本当のリストラクチャネリング(コンプライアンスやコーポレートガバナンス、経営資源の選択と集中等の構造改革)を先送りにした、大規模財政支出。それに伴う財政赤字と国債格付けの下落(国債の資産価値の下落)。
失われた十年を、いかにして乗り越えたか
この筆者は失われた十年を「構造改革の先送りが続いたことによる構造改革不況」と定義している。
自動車産業、家電産業、流通産業でのケーススタディもあり、具体的で分かりやすい。